Code for Americaファウンダー、ジェニファー・パルカさんインタビュー


本ブログポストは2015年4月3日にサンノゼ・マーキュリーニュースに掲載された、Code for Americaファウンダー、ジェニファー・パルカさんのインタビュー記事について、オリジナルの記者、マット・オブライエンさんに許諾をいただき、翻訳を行ったものです。著作権の関係で写真は転載できませんので、オリジナル記事をご確認ください。

なお、サンノゼ・マーキュリーニュースはベイエリアをカバーして発行される米国日刊紙で53万部の発行部数をほこります。シリコンバレーのニュースが載ることも多く、Code for AmericaやCivic techについても何度か取り上げられています。日本語訳については柴田重臣に責がありますので、誤訳等についてはshibata@shigeomi.comまでご連絡くだされば幸いです。

Original English Article is on Mercury News by Matt O’Brien 2015 Apr. 3rd
http://www.mercurynews.com/business/ci_27843583/
Translated into Japanese by Shigeomi Shibata, co-captain of Code for Japan, member of Code for Ibaraki

Q&A シビックハッカー、ジェニファー・パルカ Code for Americaファウンダー
マット・オブライエン記者 マーキュリーニュース mobrien@mercurynews.com
2015年4月3日

サンフランシスコ - ジェニファー・パルカさんは各都市毎にテクノロジーを用いて行政をよりよくする仕事を続けている16000人のボランティアプログラマーで構成されるIT消防団のリーダーを務めています。
NPO団体Code for Americaを設立してから6年近くにわたって、使いにくい行政のWebサイトを改善しながら、オークランド市役所から始まってホワイトハウスにいたるまでシビックイノベーションに足跡を残してきました。ホワイトハウスではUSデジタルサービスと呼ばれるエリート技術者集団による新部署を連邦政府内に設けています。
彼女はさらに地域の課題をオープンデータとコードで地域の住民が解決していく”シビック・ハッキング”と呼ばれるムーブメントを花開かせています。
US国内でシビックテックプロジェクトを率いる次期フェロー募集の面接が行われているサンフランシスコの古い皮革工場をリニューアルしたCode for America本部でインタビューは行われました。なお、インタビューは長さおよび内容をわかりやすくするために編集してあります。

Q: ベイエリアのような場所でのシビックハッキングブームは何がひっぱっているのでしょう?

A.ベイエリアには本当に大切にされているいくつかの価値観があります。つまり、「IT業界はたくさんの富と価値を生み出しているけど、それから取り残されている人もいるんじゃないか」と考えるというようなことです。ここで行われていることの多くは、以下のような問いに答えることです。10分以内にランチが配達されてくるのは文字どおり簡単なのに、同時に生活保護には年間10兆円ものお金が使われ、申請に使われるサイトは画面遷移が50も有って、答えなければいけない項目も百以上、そして面接を受けてやっと受理されるかどうかがわかるというようなことがおこるのはなぜか。
このようなサービスを利用しようとしている人にとっての使い勝手は、電話受付のそれとはあまりにも違います。われわれの持つ価値観が社会の一員として生活するうえで、多くの人がそのギャップを埋めなければならないと感じているのです。もう一つの理由は、行政データがオープンデータとして開放されたので、多くのギークにとって、子どもが駄菓子屋にいるみたいな感じで「これで遊ぼうよ、何が起こるかやってみよう」といったものなのです。これは素晴らしいことです。

Q:デジタル革命に取り残された自治体というのはどういうものだったのですか?

A.別に自治体に限らず、行政一般について遅れています。多くの自治体はわれわれが自治体とはこうあるべきだと思うようなことをしなければなりません。われわれは自治体が税金をとても注意深く使うことを望み、リスクを避け、ありとあらゆることを調べ、長い時間枠での意思決定をすることを望んできました。また、自治体が公平であることをもっとも大切にするようにもしてきました。これは大切な価値観です、しかし同時に、運営のレベルでは、購買のようにコンプライアンスが望まれるものはとてもゆっくりにしかできなくなってしまったのです。2015年にこのやり方でテクノロジーを活用しサービスを購入する事はできません。行政に文句を言う事は簡単ですが、われわれが行政をそのようにしてきたのです。

Q.ベンチャーキャピタルはサンフランシスコに住む富裕層向けサービスを改善するアプリ開発者に出資しているとずいぶん聞きますが、逆にあなたはフェローと共にシビックテックスタートアップが資金を得ることに成功しているそうです。どうすれば、そんなことが可能になるのでしょう?

A.私が最初に始めたとき、ベンチャー出資者は行政にあまり興味を持っていませんでした。たぶんこんな理由からです。行政はペーパーワークばかりで、セールスのサイクルも長い。でも、私たちはそこに巨大なマーケットがあることを示したのです。連邦政府、州、市レベルあわせて約22兆円です。行政内には新しいツールを求めている人がたくさん居ます。ベンチャー出資者はもっとオープンです。アンドリーセン・ホロウィッツやSVエンジェルのような投資家だけでなく、行政向けテクノロジースタートアップに特化した28億円規模のガブテックファンドのようなものも現在はあります。もっとも優秀なエンジニアたちは行政分野こそ、彼らの活躍分野だとみなしているのです。優秀な人が集まってきていますし、投資も増加しています。

Q.Code for Americaのプロジェクトでうまく行かなかったものについて教えてください。

A.私たちは失敗を本当に大切にしています。最初の年は、三つの都市で活動していました。ボストンは最高でしたし、そのプロジェクトはまだ続いています。フィラデルフィアも同じように素晴らしかったです。多くの成果はカルチャーの変化に関してです。(例えば、低収入層市民の意見を自治体側が集めるのに携帯電話のSMSメッセージを使うような感じです。)でも、シアトルでは市民参画を促すようなプラットフォームを構築しようとしたのですが、うまく行きませんでした。チームは素晴らしかったのです、でも、我々がそこで学んだのは、市民参画というのは特定の問題に関することであって、市民参画一般というような漠然としたことではないということです。現在は、全てのプロジェクトが実際の市民のニーズをはっきりさせて取り組んでいます。

Q.オークランド市での生活が何か影響を与えていますか?

A.オークランドで2013年に働き始めてから、オークランドでの生活は信じられないぐらい、刺激的なものになりました。最初に引越したときは、CIOはおろかIT部門長すら居なかったのです。Code for Americaのプロジェクト - オープン・オークランド・フリゲイド - がわれわれをリビー・シャーフ(市議会議員、現在は市長)にひきあわせてくれました。彼女はシビックデータを知っていて、その意味するところを理解する先進的な議員であることをわれわれは認識したのです。彼女はオープンデータを必要とする我々のプロジェクトをひっぱってくれました。オキュパイ・オークランド(訳注:オークランド市役所の前で行われたデモ。他のオキュパイ・ムーブメントと同時期)の間、行政情報の開示に関する何千ものリクエストが出されました。しかし、行政側はそれに対してうまく対処できなかったのです。それは行政側が情報を隠そうとしていたからではなく、リクエストをひろいあげて、それを満たすデータを提供する方法が無かったからです。オラクル製のシステムはあったのです。ただ、高価なシステムだったのに本当に誰も使ったことが無かったのです。

Q.そこでオープン・オークランドは何をしたのですか?

A.レコードトラック(記録追跡)と名づけられたシステムを作りました。スタートアップのもっとも才能あるエンジニアが問題を解決するやり方でです。とても見栄えがよく、簡単に使えるのです。現在までに約9000のリクエストが処理されています。市民と市役所の距離が遠かったオークランドでは、それは素晴らしいことだと感じられました。人々が悪かったのではありません、ツールとプロセスが良くなかったのです。リビーはここで何が起こったか彼女が感じていることをうまく説明しています。「市の職員は21世紀型のアプローチでの成功を誇りに思うことにより、これまでに思われてきたように無能なのではないと証明しました」フェローは職員に向けてツールを作成したのではありません、職員と共にツールを作成したのです。テクノロジーが苦手だった市が、テクノロジーによりパワーアップしたと感じるようになったのです、まるでクールな子どものように。「僕はこんなにうまくテクノロジーを使うことができるんだ」

2013年のCode for Americaサミットで行われたリビーのプレゼンの間、私は舞台裏で喜びの涙を流していました。私は泣いていたのです、だって私たちのやったことが自分の住んでいる街にこんなにも大きなインパクトを与えることが出来るなんて考えたこともなかったのですから。

記事についてはマット・オブライエン記者(電話408-920-5011)まで
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ジェニファー・パルカさんについて
役職:
Code for Americaのファウンダー、エグゼクティブ・ディレクター
前職:連邦政府CTO補佐
居所:オークランド市
年齢:45歳
学歴:エール大学
家族:娘および婚約者のティム・オライリー(オライリー出版創業者)

ジェニファー・パルカさんと5つのこと
1.オークランドの家の裏庭で八羽の鶏を飼っている
2.昨年は週に1回ホワイトハウスに通いCTO補佐官としてUSデジタルサービスを創設
3.毎秋7000人を集客するイーストベイ、ミニ・メイカー・フェアの共同創設者
4.大学卒業後の最初の仕事はNPO Chilren's Home Society of California
5.ゲームデベロッパーズカンファレンスを8年にわたって運営